2015年6月19日金曜日

白い紙にお絵かきできない


子供は自由にのびのびお絵かきするもの。
とはかぎらない、と知ったのは娘が2歳くらいのころ。


好奇心旺盛でなんでもやりたがるので、
お絵かきや工作も大好き、のはずなのだが、



白い紙を渡すとフリーズ。



そして、おびえだす。
しまいには、泣く。


「どしたの?自由に描いていいんだよ」

「こわい!間違ったらどうしよう!!」



・・・幼児のお絵かきに間違いも何も。。
オラオラーって描きなぐって、ドベーって塗りゃあいいんじゃないの。


「自由に描いていい」がストレスになることも













すべきことが決まっていない。
何が正解で、何が不正解なのかはっきりしない。

そういうのが、アスペの子にはものすごいストレスだったりします。


真っ白な紙というのはそういうものの象徴で、
まずどこから手をつけたらいいのか分からないんでしょうね。

誰でも分からないことには不安を感じるものですが、
過剰に不安を感じる子には、もう白い紙自体が恐怖の対象になります。


消せない筆記用具もダメ

色えんぴつ、カラーペン、クレヨンなどもしばらくダメでした。
理由は、「消せないから」。

これまた「間違ったらどうすんの攻撃」がはじまり、
断固としてシャーペンか鉛筆しか受け付けてくれません。

こうして、うすーくてほそーくて小さーい作品が大量生産されたのでした。


当たりをつけてあげるとできる

無理にやらせなくてもいいんだけど、
どうも本人は描きたいと思っているようなので、何とかやらせてあげたい。

やってみたのは、手がかりをひとつ与えること。

たとえば、シャーっと一本、線を描いてあげるんです。
「ほーら、地面だよー。じゃあ、この上に何がいるのかな?」
すると、ヒトやら花やら描きはじめます。
すると木とか太陽とかも欲しくなりますよね。

いちどエンジンがかかるとあとはどんどん進めるので、
ほったらかしても大丈夫。

気をつけなくてはいけないのは、いきなり勝手に手を加えないこと。
予測していなかったことが起こるとマジギレされます。
「最初に1つだけお母さんが描いていい?」と許可を取ってからやる必要があります。
ああめんどくさい。



無理強いはしない

それでもやりたがらないことはあるので、
そんな時は無理強いをしないことを心がけました。
あくまでも、淡々と、粛々と、白い紙を撤去します。

ここでがっかりしていることを気づかれてもいけません。
子供は失望されたことを敏感に察知する能力があります。

大人として子供がのびのび楽しそうにお絵かきしてほしいものですが、
あっちにはあっちの事情がありますからねー。



たくさんのものを描くうちに、自由にも慣れる

次第にですが、5歳頃には平気になりました。
幼稚園に行くようになって「テーマのあるお絵かき」を日々するようになり、
スキルと経験値が上がるとだんだん自由に描きたくなってくるようですね。


白い紙を見せるだけでひっくり返って泣く娘に途方に暮れていたあの頃の自分に、
「そのうちできるようになるから大丈夫」と言ってあげたいです。


お絵かき先生にはお世話になったなぁ。
なんせ消せるもんね。












2カラーせんせい
せんせい おえかきせんせい SH-01



2015年6月15日月曜日

イヤなもの・怖いものが多すぎるという病

ひと口に発達障害と言っても特性は人それぞれで、
「けっきょく何が問題なん?」と問われても、その答えはさまざまです。


娘の場合、発達障害で最も困難だったことは、

「イヤなもの・怖いものが多すぎる」

という症状でした。


おそらく、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚といった五感のほか、
恐怖感・不安感・緊張感といった精神的な感受性をふくめた心身のあらゆるセンサーが過敏すぎるためにおこるバグのようなものだと思います。


感じすぎるために、普通の人には何でもないようなことでも不快感を覚えてしまう。
不快なものを避けるために、好きなもの、知っているもの、大丈夫なものに異常にこだわる。
こだわっているものを取り上げられたり邪魔されたりすると、生存を拒絶されたかのように抵抗する。

そして、スペックをオーバーした時点で、パニックに陥る。



こだわり。
パニック。


これらは本人にとっても辛く、周囲の人間を疲れさせ、偏見や誤解を生むためさらに環境が悪くなるという悪循環を招きます。


こだわりやパニックを起こす子にはそれ相応の理由が(本人にとっては)あるのですが、なかなか他人が理解することは難しいものです。そのため、変わっている子、わがままな子、やっかいな子といったレッテルを貼られます。



泣き疲れて寝るというお決まりのポーズ














それは親でさえ同じです。
障害を理解するためのペアレントトレーニングを受ければ、ある程度は不可解な行動の理由が理解できます。そうすれば多少は気持ちが楽になるかも知れませんが、だからって負担が軽くなるわけではありません。

頭痛の原因が分かったからと言って、頭痛が治らなければ辛いのは変わらないのと同じです。


私もいろんな専門機関にかかっていろんな専門書を読んできて、障害の原因や症状、問題点、すべきことが分かったのは大きな収穫でしたが、楽になったわけではありません。むしろ余計なことを知ってしまったために余計な心労をした部分もあると思います。


今ではそれも含めてやってきて良かったと思っていますが。




小学生になった娘は、昔よく見られたようなこだわりや頻繁なパニックはなくなってきました。
しかし感覚が過敏なのはそれほど変わらないので、けっきょくは本人にガマンを強いているにすぎません。

フツーの子には何のエネルギーも必要としない生活が、あの子にとっては多大なるガマンの上に成り立っています。もう、想像するだけで疲れるんですが。


学校で疲れて帰ってきてるんだから、せめて家ではリラックスしてほしいと言っておきながら、今日も昨日も、しょ~もないことで説教なんかしてしまう私は、すでにガマンの量で娘に負けている気がします。





2015年6月11日木曜日

抱っこしにくい赤ちゃん

赤ちゃん時代は抱っこがとても大変でした。


エビ反りになる。
足をばたつかせる。
こちらに体を預けない。

釣りたてのカジキマグロを横抱きしているような感じ。
※イメージです












しかも体が大きめで力が強い(女の子なのに)から大変さ2倍。


1人目の子だから抱くほうも初心者、ということを差し引いてもしんどかった。


大変なのは授乳中で、目を合わせて微笑みながらなんて悠長なことはやってられません。
落ちないように、噛まれないように抱きすくめながら与えるので、夏なんか汗びっしょり。


あやしたり寝かしつけたりするのもそんな状態なので、父親も私も、ダブルで腱鞘炎になりました。腕力にはけっこう自信があったんですけどねー。



発達障害の子が抱っこしにくいのは割と知られています。



原因はいろいろ言われていますが、触覚過敏で肌が触れ合うのを嫌うとか、もともと体が緊張しやすいとか、空中のふわふわした感じがイヤとか、まあとにかくそういうことなんだと思います。



赤ちゃん期を過ぎても、抱っこ(ハグ)しにくいのは変わりませんでした。

子供は抱っこしてほしいとは思っているようですが、どこかぎこちなくて腰が引けていて、体が硬いので、なかなかうまくいかないんです。動きが唐突なので、急に飛びついてきて親子共々地面に倒れて、ついあぶないでしょ!と怒ってしまったり。

トコトコやってきて自然にむぎゅってできる子供ってかわいいですよね。でも、みんなができるわけじゃないんですよ。


抱っこをはじめとするスキンシップは、親子の愛着形成に重要な役割をはたすといいます。特に、まだ言葉を介してコミュニケーションが取れない年齢のうちはそうですよね。


でも、お互いにやりたいと思っていてもうまくできないところに、この特性の難しさがあります。「お母さんが抱きしめてあげればすべて解決」みたいな育児論がありますが、それが簡単にできないから苦労してんの!と何度思ったか分かりません。


抱っこしにくい。
たったそれだけのことだけど、とても象徴的。
今から思えば、アスペの子って人と関わりを持って生きていくにはたくさんの苦痛とハンデを背負って生まれてきているんだなーって分かります。


興味があるものがあれば抱っこもキープできる


※抱っこしにくいだけで発達障害というわけではありません。診断には専門家の総合的な判断が必要です。