2016年9月8日木曜日

自閉症が治る薬ができたとして

自閉症の発症メカニズム解明 九大チーム、神経変異の原因分かる

長らく謎だった自閉症発症のメカニズムが少しずつ解明されてきているようです。原因が分かれば、治療方法や薬の開発につながります。

もちろん薬はそんなに簡単にできるものではないでしょうが、20年前までは脳機能障害かどうかも分かっておらず、「基本的に治らない」が常識だったのですから、ものすごい進歩であることは想像できます。

気になるのは、自閉症特有の困難(人間関係が苦手とか段取りが悪いとか)がその薬で治るとすると、同時に自閉症ならではの能力も失われてしまうのでか、ということです。

特有の能力とは、抜群の記憶力、優れた音感、並外れた味覚や嗅覚などです。

人間というのはうまくできていて、ある部分が足りないと他の部分が発達するようになっているみたいです。凹の能力を埋めるように、凸の能力があるのです。自閉症の人が定型の人にはない能力を持ち合わせているのはそのためです。

凹を薬で治してしまったら、凸の力もなくなって、能力的に平坦な、単なる凡人になってしまいそうです。たぶん、その薬は良くも悪くも自閉症の人を普通の人に変えることになるでしょう。


もし、私が娘の症状に一番悩んでいたころにその薬が開発されたら・・・

こだわりや多動、対話ができない状態が改善される代わりに、記憶力や優れた音感や抜群の視覚的な理解力がなくなると言われたら・・・


たぶんそれでも薬を使っていたと思います。


いろんな人がいてもいい、むしろ多様である方がいい、
そもそも自閉症は病気じゃない、薬で治す必要なんかない、
みんなが同じ普通になるなんて気持ち悪い、彼女のあるがままでいてくれたらいい―。

私もそう思います。でも、言うだけなら簡単です。

本人の生きづらさを目の当たりにして、それに振り回される自分や周囲の人間がいて、将来のことを考えたら不安しかないという本当につらい状況とある時だったら、

「そんなこと言ってられねぇ!」って思ったでしょう。


それで、薬のおかげで本人も周りも楽になったとしても、なんとなく後ろめたさを感じると思います。

ホントにこれで良かったのかと。

今だって、娘が成長とともに特殊能力が失っていくのをまのあたりにすると、「もったいないな・・・」という気持ちになるのですから。もっと、本人の特性に合わせた教育があったんじゃないかと。


薬、早く開発されるといいですね。
でも、親の葛藤は薬では治らないでしょうね。



←自閉症が治療可能となった近未来の小説。自閉症の主人公が、治療すれば自分が自分ではなくなるのではないかと苦悩する話。めちゃくちゃおもしろかった。タイトルがまたいいよねー。


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