2016年4月29日金曜日

偏食は甘えやしつけの問題なのか?



以前通っていた親子学級で、ひどい偏食の子がいました。

にんじんが食べられない、野菜が嫌いといったレベルではなく、固形物を一切受け付けない、極端な偏食の子でした。3歳過ぎのかわいい女の子なのにすっかりやせていて、青白い顔をしていました。そのままだと栄養失調になってしまうので、鼻にはいつも栄養チューブが。

お母さんの苦労ははかりしれません。本当に、本当に、どんなに工夫をしても促してみても、食べてくれないのだと言います。家庭的で料理上手なお母さんでした。


うちの子たちは偏食はあるものの、好きなものなら食べられるので、栄養不足になるほどではありませんでした。ランチの時間はその子の前で大盛りのうどんをズルズルズルズルおいしー!と大騒ぎしながら食べていました。

目の前であんまり勢いよくおいしそうに食べる人がいるもんだから、その子も「ちょっと食べてみようかな・・・」と思ったらしく、一本だけ、うどんを口に運びました。

短いうどんを、一本だけ。
ちゅるっと飲み込んで、「おいしい」と言いました。


その時の、その子のお母さんの顔。


びっくりしたような、うれしいような、戸惑ったような顔。「すっごい久しぶりに食べてくれました・・・!」と、泣きながら言っていました。私には想像もできない、多くの苦労があったんだと思います。


昔ほどではありませんが、今でも偏食をしつけのせい、甘えのせいと決めつけ、親をただ責めるだけの人がいます。もちろん、しつけが原因であることも皆無ではありませんが、世の中には本当に食べ物を受け付けられない子がいるのです。

味覚や嗅覚が敏感な子は、食べ物に含まれるさまざまな成分の中に少しでもイヤなものが混じっているのを感じ取ります。また、口腔内の触覚が敏感な子は、ほんのちょっとの歯ごたえをガラスを食べているように痛く感じることがあるそうです。

そういった感覚は本人たちにとっては現実のものですから、いくら食育や道徳で治そうとしても治るものではありません。むしろ、自分たちの感覚が道徳的に間違っているのだと言われると、自身の感性そのものを否定するようになるでしょう。



食べたくても食べられなくてやせ細っていたあの子。
うどん1本で感動して泣いていたお母さん。


誰があの2人を責められるでしょうか。


何でも食べる子は「いい子」なのではなく、ラッキーな子なのです。何でも食べられない子を「悪い子」と決めつけてはいけません。将来的には偏食の子も食事の幅を広げていく必要があるのは間違いありませんが、それは複雑に絡まったワイヤーをほどくような、時間と根気がいる作業なのです。






2016年4月14日木曜日

2歳児収納ケース殺害で思ったこと


■2歳児収納ケース殺害 子の誕生切望、昨年には家族旅行…発育相談、月内に予定
■2歳児収納ケース殺害 母親の注意後、父親が閉じ込め 泣き声「そのうち聞こえなくなった」

殺害された2歳の男の子は、1歳半健診で発達障害の疑いがあったとのことでした。
以下、予測の範ちゅうを超えない無責任な内容ですが、感じたことを書きます。


定型の子でも幼児の子供の育児は大変なのに、発達障害の子供となるとその大変さは何倍になるのか分かりません。特に活発でこだわりが強い子ほど親の疲労やイライラがたまります。いつも動いていて、騒ぐのをやめなくて、言うことを全く聞かないのが毎日続くと、「たのむからちょっと止まっててくれ」と、何かに閉じ込めておきなくなる気持ちは分からなくもありません。


しかし、閉じ込めておきたいと考えることから、実際に閉じ込めるまで発展するには、「発達障害の子の育児は大変」だけではない別の要素が必要です。たとえば、

・ 周囲(特に父親)の無理解
・ 発達障害に関する予備知識の不足
・ 手のかかるきょうだい児の存在
・ 心の余裕をなくすほどの貧困

などです。

あと、あんまり言いたくないけど、やっぱり親のストレス耐性に個人差があることも無関係ではありません。


テレビを近くで見すぎたことがきっかけだといいますが、視覚刺激に敏感な子は異常なほどテレビやDVDに執着します。画面にチューする勢いで近づくのはよくみられる光景です。この2歳の子がどうだったかは知りませんが、テレビとの関係に悩む発達障害の親はものすごく多いのは事実です。

こういう分野になじみがない人は「子供だからうるさいのは当然」、「テレビをみたくらいで」、と考えてしまいがちですが、そんなことでは済まない、本人が悪いわけではないけど養育者をはてしなく疲弊させる破壊力が、発達障害の子にはあります。


だからって虐待するのは、当たり前だけどいけないことです。だから、親がそういった状況に陥らないために、話を聞くことで孤独や疲労をやわらげ、知識をつけてもらうことで子供への理解をすすめるのが自治体の発達支援です。今回はその日程調整をしている最中だったそうです。


逮捕された親が子供の発達状況のために追い詰められていたかどうかは現時点では不明ですが、支援が決定した矢先の出来事、自治体の相談員や保健士さんもさぞ無念だったでしょう。